介護保険サービス利用ガイド:介護が必要だと感じたら
介護保険制度とは?
日本の介護保険制度は、介護を必要としている人を国全体でサポートする制度です。2000(平成12)年に介護保険法が施行されました。40歳以上から介護保険料を徴収し、介護保険料と公費などをもとにして、要支援者と要介護者に支援を行っています。
介護保険制度の特徴
介護保険制度には次のような特徴があります。
- サービスを受けられるのは65歳以上の人。もしくは40歳以降65歳未満で、がんなどの老化が原因となる16の特定疾病のどれかを抱えている人です。
- サービスを利用するには、介護認定を受ける必要があります。
- 認定結果、要介護1から5、要支援1,2の程度に分けられ、この程度によって受けられるサービスや、支給額が決まります。
- サービスを利用する要介護認定を受けた人の負担額は料金の1割(一定所得以上の方の場合は2~3割)
- サービスの種類や事業者は、利用者が選べます。
介護の必要量を超えるサービスの利用には、100%の支払いが発生します。また、介護認定の結果、要介護や要支援の対象とならないケースもあります。
介護保険サービスの始め方
介護保険サービスの始め方を紹介します。
1.介護保険サービスの申請
介護保険サービスの始め方としては、まず市町村の窓口で申請することから始まります。市町村によっては、「地域包括支援センター」が代行している場合があります。申請の際は、「介護保険の被保険証」が必要です。申し込んでからサービスを受けるまで約1か月程度かかると考えてください。
例えば、病気で入院して退院後に介護サービスを受ける場合、入院中に申請を行うことで、退院後スムーズに介護サービスを受けることができます。
2.要介護認定を受ける
続いて要介護認定を受けますが、これには2段階の判定が行われます。
一次判定
一次判定では、市区町村の認定調査員が訪問して、心身の状況について本人や家族から聞き取りなどの調査を行います。調査の内容は全国共通です。また、市区町村では本人の主治医(かかりつけ医)に対して医学的な観点から心身の状況についての意見書を依頼します。
二次判定
認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、保険・福祉・医療の学識経験者による「介護認定審査会」で審査し、どのくらいの介護が必要か判定します。
要介護度は要介護1~5または要支援1、2のいずれかとなります。
3.認定結果が通知
原則として申請から 30 日以内に、市区町村から認定結果が通知されます。
4.ケアプランの作成
認定の結果、要介護の場合と、要支援の場合とでケアプランの作成が次のようになります。
要介護1~5で在宅希望
要介護1~5と認定され、在宅で介護サービスを利用する場合、居宅介護支援事業者と契約し、その事業者のケアマネジャーに依頼して、利用するサービスを決め、介護サービス計画(ケアプラン) を作成してもらいます。
要介護1~5で施設希望
要介護1~5と認定され、施設で介護サービスを利用する場合は、希望する施設に直接申し込みます。
要支援1・2
要支援1・2と認定された場合は、地域包括支援センターの担当職員が介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)を作成します。
5.サービスの利用開始
サービス事業者に「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」を提示して、ケアプランに基づいた居宅サービスや施設サービスを利用します。
サービス内容
サービスには、自宅訪問、施設入所など大きく7つのサービスがあります。注意点は、利用の上限額が介護の程度により決まっているのと、要支援で利用できるサービスが限られること、中には住まいと同じ市区町村の業者でないと利用できない(地域限定)などがあります。下部でサービスの概要を紹介してます。
利用者負担額
サービスの利用者負担額は下の表のように、所得によって1割~3割となります。(2023年8月時点)
本人の年間所得 | 世帯年間所得 | 負担 |
160万円未満 | - | 1割 |
160万円以上220万円未満 | 単身280万円未満 | 1割 |
夫婦346万円未満 | 1割 | |
単身280万円以上 | 2割 | |
夫婦346万円以上 | 2割 | |
220万円以上 | 単身280万円未満 | 1割 |
夫婦346万円未満 | 1割 | |
単身280万円以上340万円未満 | 2割 | |
夫婦346万円以上463万円未満 | 2割 | |
単身340万円以上 | 3割 | |
夫婦463万円以上 | 3割 |
自宅訪問サービス
自宅に訪問するサービスには次のものがあります。
訪問介護(ホームヘルプ)
訪問介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるように、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して生活の支援をします。直接利用者の援助に該当しないサービスや、日常生活の援助の範囲を超えるサービスは対象外です。
訪問入浴介護
訪問入浴介護は、看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問して、持参した浴槽によって入浴の介護を行います。
要支援者利用可能
訪問看護
訪問看護は、看護師などが疾患のある利用者の自宅を訪問して、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行います。
要支援者利用可能
訪問リハビリ
訪問リハビリテーションは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが利用者の自宅を訪問して、心身機能の維持回復や日常生活の自立に向けたリハビリテーションを行います。
要支援者利用可能
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護は、夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問します。「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあります。
地域限定
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に受けることができます。また、訪問介護員だけでなく看護師なども連携しているため、介護と看護の一体的なサービス提供を受けることもできます。
地域限定
施設に通うサービス
施設に通うサービスには、デイサービス、デイケア、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護があります。利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、施設に通って、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで受けられるものです。自宅にこもりきりの利用者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施されます。自宅から施設までの送迎も料金に含まれますが、施設での日常生活費(食費・おむつ代など)は別途負担することが多いです。
通所介護(デイサービス)
通所介護は、利用者が通所介護の施設(利用定員19人以上のデイサービスセンターなど)の利用ができるサービスです。生活機能向上グループ活動などの高齢者同士の交流もあります。事業所の規模や所要時間によって費用が設定されています。
通所リハビリテーション(デイケア)
通所リハビリテーションは、通所リハビリテーションの施設(老人保健施設、病院、診療所など)に通って受けるサービスです。事業所の規模や所要時間によって費用が設定されています。
要支援者利用可能
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護は、通所介護(デイサービス)と内容は同じですが、利用者が住む市区町村内の事業所や施設方の利用が基本となります。料金はデイサービスと異なります。
地域限定
療養通所介護
療養通所介護は常に看護師による観察を必要とする難病、認知症、脳血管疾患後遺症等の重度要介護者又はがん末期患者を対象にしたサービスです。利用者が住む市区町村内の事業所や施設方の利用が基本となります。
地域限定
認知症対応型通所介護
認知症の利用者を対象にした専門的なケアを受けることができるサービスです。
要支援者利用可能・地域限定
施設で生活するサービス
施設で生活するサービスには、長期にわたって療養が必要な方向けの施設と、在宅復帰を目指している方向けの施設があります。介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(長期)、特定施設入居者生活介護、介護医療院(長期)などがあります。施設サービス費の他、居住費・食費・日常生活費などがかかります。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人福祉施設は、入所者が可能な限り在宅復帰できることを念頭に、常に介護が必要な方の入所を受け入れている施設で、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを受けることができます。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、在宅復帰を目指している方向けで、入所者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるように、リハビリや必要な医療、介護などを受けることができます。
介護療養型医療施設
長期にわたって療養が必要な方向けで、可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるように、機能訓練や必要な医療、介護などを受けられる施設です。
特定施設入居者生活介護
特定施設入居者生活介護は、指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームなどから、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などを受けることができるサービスです。
要支援者利用可能
介護医療院
介護医療院は、長期にわたって療養が必要である方向けの施設です。利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるように、療養上の管理、看護、介護、機能訓練、その他必要な医療と日常生活に必要なサービスなどを受けることができます。
短期間の宿泊サービス
短期間の宿泊サービスには短期入所生活介護(ショートステイ)と、短期入所療養介護があります。連続利用日数は30日までで、日常生活費(食費・滞在費・理美容代など)などは、別途かかります。利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施されてます。
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所生活介護は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などが、常に介護が必要な方の短期間の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供してます。
利用対象者の条件があります。(一例)
- 利用者の心身の状況や病状が悪い場合
- 家族(介護者)の疾病、冠婚葬祭、出張
- 家族(介護者)の身体的・精神的負担の軽減
要支援者利用可能
短期入所療養介護
短期入所療養介護は、医療機関や介護老人保健施設、介護医療院の、日常生活上の世話や、医療、看護、機能訓練などのサービスを受けることができます。
要支援者利用可能
訪問・通い・宿泊を組み合わせたサービ
訪問、通い、宿泊を組み合わせたサービスに、小規模多機能型居宅介護や、看護小規模多機能型居宅介護があります。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は、同一の介護事業者が「通所(デイサービス)」を中心に、「訪問(ホームヘルプ)」や「泊まり(ショートステイ)」を一体的に提供します。
これまでの介護サービスは、利用者や家族の状況に合わせて「通所」「訪問」「泊まり」を選択し、それぞれ必要なサービスを契約するという形でした。しかし、利用者の状況は日々変化し、その都度利用するサービスを変更することは「介護事業所を新たに探す必要がある」「信頼関係を築いたスタッフや利用者と離れることへの不安」など、利用者やその家族ともに大きな負担が生じます。このような負担や不安を解消しサービス選択の自由度が高いところが、小規模多機能型居宅介護の大きな特徴です。
要支援者利用可能・地域限定
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは、看護と介護を一体的に提供するサービスです。 「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスで、「通い」、「泊まり」、「訪問介護」、「訪問看護」サービスを提供します。 医療ケアが必要な人、退院したばかりで体調が不安定な人、家族の介護負担を軽減したい人などの在宅生活を支援するためにつくられた制度です。
看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護をベースとして、訪問看護サービスを加えたものです。医療ケアが必要な場合は、看護小規模多機能型居宅介護が向いています。
施設に通うサービス
地域密着型サービス
地域密着型サービスには、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)と、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護があります。日常生活費(食材料費・理美容代・おむつ代など)などは、別途負担する必要があります。
要支援者利用可能・地域限定
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護は、認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービスです。認知症の利用者が、グループホームに入所し、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などのサービスを受けます。グループホームでは、1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送ります。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)とは、常に介護が必要な高齢者ができる限り自立した生活を送れるように支援する定員29名以下の入所施設です。入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを提供します。明るく家庭的な雰囲気があり、地域や家族との結びつきを重視した運営を行うこととされています。
地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護とは、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練及び療養上の世話を行うことにより、利用者が持っている能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにする目的で提供されるサービスのことです。施設は、指定を受けた入居定員30人未満の有料老人ホームや軽費老人ホームなどです。
福祉用具を使う
福祉用具貸与
福祉用具貸与は、指定を受けた事業者が、利用者の心身の状況、希望及びその生活環境等をふまえ、適切な福祉用具を選ぶための援助・取り付け・調整などを行い、福祉用具を貸与するものです。
要支援者利用可能
福祉用具貸与の対象は以下の品目で、要介護度に応じて利用できる用具が異なります。また、負担額についても所得に応じて1割から3割負担になります。
要介護度別に1ヵ月間の支給限度額が決まっているため、他の介護サービスとの組合せの中で限度額に応じた福祉用具をレンタルする必要があります。
特殊寝台および付属品 | * |
床ずれ防止用具 | * |
体位変換器 | * |
手すり | |
スロープ | |
車いすおよび付属品 | * |
歩行器 | |
歩行補助杖 | |
移動用リフト | * |
徘徊感知機器 | * |
自動排泄処理装置 | ** |
*:要支援1・2、要介護1は利用不可
**:要支援1・2、要介護1・2・3は利用不可
特定福祉用具販売
特定福祉用具販売は、福祉用具販売の指定を受けた事業者が、入浴や排泄に用いる、貸与になじまない福祉用具を一部負担で購入できるサービスです。
要支援者利用可能
特定福祉用具販売の利用方法
利用者がいったん全額を支払った後、費用の9割~7割(所得による)が介護保険から払い戻されます。
支給額
同一年度で購入できるのは10万円までです。
支給対象の品目
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具の部品