• 老後資金の計算:医療費や介護費はいくら必要?

    更新日:2023/09/14 投稿日:2023/09/06

    老後資金がどのくらい必要か計算するのに、生活費以外に医療費や介護費も考慮したいです。医療費と介護費はリタイヤ後に500万円前後は必要だと言われています。当ページでは、老後資金の内の、医療費と介護費にどのくらいが必要なのか計算方法を紹介します。

    一人あたりの医療費

    以下は2010年の1人当たりの医療費の統計データをグラフにしたものです。

    例えば、65歳から69歳の1年間の医療費は、44万5千円です。このうちの自己負担額は、下のグラフのように9万1,000円です。

    上記のデータは単純に人数で割った平均をグラフにしているため、負担額が、44万5千円の3割とはなってません。また、100歳以上になると118万5000円の医療費がかかりますが、自己負担は平均で9万1千円になります。これは、高額療養費制度で支払いの上限額が決められているためです。

    高額療養費制度

    高額療養費制度は、所得に対して医療費の自己負担が軽減されるものです。例えば、75歳以上の住民税非課税世帯の場合の月の上限額は15,000円と決まっています。(年間18万円)

    高額介護合算療養費制度

    高齢になると、医療費だけでなく、介護費の支出も増加します。そのため、医療費と介護費の合計額に対して、補助される制度が2008年にできました。

    例えば、それまで年間に医療30万円、介護30万の合計60万円を負担していた場合、自己負担額は31万円になります。ただし、一時的に全額支払って、その後、申請することで負担額の一部が戻ってくる仕組みになってます。

    計算期間は、毎年8月1日~翌年7月31日の1年間になります。この期間の医療保険と介護保険における自己負担の合算額を確認しましょう。

    高額療養費制度は、頻繁に負担額の見直しが行われています。最新の情報は、厚生労働省の公式サイトで確認してください。

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html

    介護期間

    例え「高額介護合算療養費制度」があったとしても、医療と介護の負担が重なれば、年金生活者にとって負担となります。できるだけ、医療に頼らず、介護期間を短くするような余生を送りたいものです。

    ただ、老後資金を今から考えるうえで、どのくらいの介護期間を見積もるべきかあらかじめ目安を決めておきたいです。そこで、介護が必要になる期間を「健康寿命」と「平均寿命」から計算することを提案します。

    健康寿命

    健康寿命は、介護を必要とせずに自力で生活ができる平均年齢です。下の表は、2019年の女性の健康寿命と、2020年の平均寿命を表にしたものです。介護期間の単位は”年”です。

    順位 地域 健康寿命(歳) 寿命(歳) 介護期間
    1 三重県 77.58 87.59 10.01
    2 山梨県 76.74 87.94 11.2
    3 宮崎県 76.71 87.6 10.89
    4 大分県 76.6 87.99 11.39
    5 静岡県 76.58 87.48 10.9
    6 島根県 76.42 88.21 11.79
    7 栃木県 76.36 86.89 10.53
    8 高知県 76.32 87.84 11.52
    9 鹿児島県 76.23 87.53 11.3
    10 岐阜県 76.18 87.51 11.33
    11 富山県 76.18 87.97 11.79
    12 愛知県 76.09 87.52 11.43
    13 青森県 76.05 86.33 10.28
    14 岡山県 76.04 88.29 12.25
    15 秋田県 76 87.1 11.1
    16 石川県 75.9 88.11 12.21
    17 茨城県 75.8 86.94 11.14
    18 群馬県 75.8 87.18 11.38
    19 福井県 75.74 87.84 12.1
    20 埼玉県 75.73 87.31 11.58
    21 千葉県 75.71 87.5 11.79
    22 新潟県 75.68 87.57 11.89
    23 山形県 75.67 87.38 11.71
    24 熊本県 75.59 88.22 12.63
    25 沖縄県 75.51 87.88 12.37
    26 兵庫県 75.5 87.9 12.4
    27 香川県 75.47 87.64 12.17
    28 佐賀県 75.47 87.78 12.31
    29 長崎県 75.42 87.41 11.99
    30 福島県 75.37 86.81 11.44
    31 和歌山県 75.33 87.36 12.03
    32 山口県 75.33 87.43 12.1
    33 福岡県 75.19 87.7 12.51
    34 宮城県 75.1 87.51 12.41
    35 北海道 75.03 87.08 12.05
    36 徳島県 75.03 87.42 12.39
    37 長野県 74.99 88.23 13.24
    38 神奈川県 74.97 87.89 12.92
    39 奈良県 74.95 87.95 13
    40 大阪府 74.78 87.37 12.59
    41 鳥取県 74.74 87.91 13.17
    42 岩手県 74.69 87.05 12.36
    43 広島県 74.59 88.16 13.57
    44 愛媛県 74.58 87.34 12.76
    45 東京都 74.55 87.86 13.31
    46 滋賀県 74.44 88.26 13.82
    47 京都府 73.68 88.25 14.57

    最も介護期間が長くなるのは、京都府の14.57年になります。医療の発達で寿命が延びたものの、ベッドで過ごす時間も長くなるというべきデータです。

    医療費と介護費はどのくらいかかるのか?

    老後資金で医療費と介護費の目安を考える上で、期間がどのくらいかかるのかを予測するのに、健康寿命と、平均寿命を取り入れて計算します。

    医療費にかかる費用と寿命

    リタイヤする時期を65歳として、平均寿命までいくら必要かを上記の「1人当たりの自己負担額」グラフから抜き出して合計します。女性の平均寿命は、2021年時点で約87.45歳です。

    • 65~69歳:9.1x5年=45.5万円
    • 70~74歳:7.7x5年=38.5万円
    • 75~79歳:6.6x5年=33万円
    • 80~84歳:7.6x5年=38万円
    • 85~89歳:8.0x3.45年=27.6万円

    65歳から87.45歳までかかる医療費は合計182.6万円です。 ただし、この金額は保険が適応された場合の金額になります。また、個人差がありますので、あくまでも目安としてください。

    さらに、介護費と合わせて考えると、費用が変わってきます。

    介護費

    介護費の見積もりを計算するのに、どのくらいの介護が必要なのか個人差があるため、これも計算するのが難しいです。ここでは、高額介護合算療養費制度の負担上限額を使って計算します。期間は最も長い京都府で、健康寿命が73.68歳、寿命が88.25約の14.57年を利用します。非課税世帯を対象に計算すると、次のようになります。

    • 年間の上限額31万円 X 要介護期間14.57年 = 合計465万円

    医療費と介護費にかかる費用

    京都府の健康寿命は73.68歳です。73.68歳までかかる医療費は、平均で次のようになります。

    • 65~69歳:9.1x5年=45.5万円
    • 70~73.68歳:7.7x5年=38.5万円

    医療費合計:84万円。これに、14.57年にかかる介護費465万円を加えます。

    非課税世帯の医療費と介護費にかかる費用:
    医療費84万円+介護費465万円=549万円

    あくまでも平均の金額となりますが、リタイヤ前に考えられる見積もりとしては、このようになると考えられます。また、所得が上がれば医療費と介護費も上がります。できましたら、お金の専門家のフィナンシャルプランナーなどに相談することをお勧めします。