• 給与6割減は不合理な差別:定年退職後の再雇用制度に光?

    更新日:2023/09/14 投稿日:2023/09/14

    再雇用制度は、定年退職する労働者にとって働くチャンスを広げるための良い制度だと当初は考えていましたが、しかし、安い賃金で高いスキルを雇用できる企業側にしかメリットがないように思えます。

    基本給が現役時代の4割も減少すると、モチベーションが低下し、生活の質も低下します。現役時代と同じ職務と条件なのに、なぜ基本給だけが下がるのか、納得いかないと感じる人は少なくないでしょう。

    定年後の再雇用で不合理な差別を訴える

    そんな中、定年退職後に再雇用された元社員が「仕事内容が定年前と同じなのに、基本給を半額以下にされたのは不当だ」として、裁判を起こしました。訴訟を起こしたのは2016年です。2023年7月に最高裁の判決がでましたが、既に約7年が経過しています。

    この裁判はまだ継続中で、今後の行方に注目が集まっています。今までの経緯をざっくりまとめると次のようになります。

    名古屋高等裁判所の一審、二審ともに、
    「定年時の額の60%を下回る部分は違法」
    として、会社側に差額の約625万円の賠償を命じました。

    ところが最高裁は、
    「不合理かどうかは基本給の性質や支給目的など踏まえて検討すべきだ」
    として、判決を破棄して名古屋高等裁判所で裁判をやり直すよう命じました。

    いよいよ、原告側にとって待ちに待った判決がでるものと思っていましたが、裁判のやり直しという結果がでました。ただ、最高裁が正規雇用と非正規雇用の賃金をめぐって基本給の格差について判断を示したのは初めてのことです。

    この裁判は、「同一労働同一賃金の原則」に基づく判決として注目を浴びて、労働者の権利と平等な待遇を保護するための判例として今後の労働法に影響を与える可能性があります。また、企業にとっては、再雇用者の給与計画だけでなく、給与体系そのものの在り方について再考する時期にきているのかもしれません。

    定年後の再雇用の基本給格差について最高裁が判断

    もし、最高裁の判決が1審、2審と同様なら、多くの再雇用労働者は失望したかもしれません。なぜなら、裁判所が定年時の基本給の4割減額を認めることになるからです。4割までなら減額してもよいと暗に示唆したことになってしまうので、どの企業も再雇用者の基本給を堂々と4割減らすことになります。

    最高裁の「基本給の性質や支給目的など踏まえて検討すべきだ」という判断がポイントです。多くの会社が再雇用者の給与を根拠なく4割減、またはそれ以上設定しているのは、問題があるということです。なぜ基本給の4割減なのかを明確な理由や基準を設けていなければ、2割減、1割減でも駄目だということになります。(と、管理人は解釈しました)

    名古屋自動車学校の裁判の要点

    以下、この裁判の要点です。

    裁判の背景

    定年退職後に再雇用された名古屋自動車学校の元社員2人が、同じ職務をこなすにもかかわらず、賃金が不当に減額されたとして、差額の支払いを求めて名古屋地裁に訴えました。

    判決内容

    名古屋地裁は、「定年時の基本給の60%を下回る部分は違法」と判断し、退職した65歳までに下回った額で約625万円の賠償を命じました。裁判長は、賃金格差が労働者の生活保障に関わる水準であることを指摘し、基本給や賞与の減額を無期雇用者と有期雇用者との差別と認定しました。

    判決の重要性

    この裁判は、同一労働同一賃金の原則を基に、基本給に関する最高裁判決が初めて行われたケースであり、企業の労務管理に大きな影響を及ぼす判決と言えます。

    今後の展望

    今後は名古屋高等裁判所での判断を待つことになります。労働条件における不合理な差別をどのように判断するかについての重要な判例となるでしょう。

    労働契約法の規定について

    労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法8条)に基づき、非正規雇用労働者と正規雇用労働者との間で不合理な労働条件の差を禁止しています。判決では、基本給の性質や支給目的を検討すべきだとの判断が示されました。